インスリンについて人に説明できますか。
はじめに
インスリンって聞いたことがありますか。
聞いたことはあるけどよくわからないという方が多い思います。
インスリンと聞くと糖尿病の薬というイメージが強いかもしれません。
実はインスリンは元々体の中で作られて働いているんです。
インスリンが体の中でどのように作られ、調整され、働いているのか。
インスリンがどうやって血糖値を保ってくれているのか。
この記事を読めば、インスリンについて人に自信を持って説明できるようになります。
インスリンを理解できれば糖尿病を理解できます。
それでは始めていきましょう。
対象
糖尿病の方、インスリンについて知ることで糖尿病の基本的な部分の理解を深めたい方にとっては特に知っておくと役立つお話です。
食べたものはどのようにして体の材料やエネルギーになるか
三大栄養素をご存知でしょうか。
主なエネルギー源である炭水化物。
効率的なエネルギー源である脂質。
そして主に体の材料になりエネルギー源にもなるタンパク質です。
食べたものはそれぞれ、ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸などの一番細かい形にまで消化されて腸から吸収されます。
糖などの栄養の吸収を察知したら、膵臓でインスリンの工場が動き出して、インスリンの製造と肝臓や全身への出荷が進められます。
吸収されたブドウ糖などの栄養は血液の流れに乗りこのインスリンとともにまず肝臓に運ばれます。
そのうちブドウ糖の大部分は肝臓の細胞に入っていきグリコーゲンとして蓄えられます。
蓄えられず通り抜けたブドウ糖は血糖として全身をまわりエネルギー源となります。
また筋肉や脂肪でもインスリンの働きでブドウ糖を細胞の中に取り込みます。
筋肉の細胞の中に入った糖は貯蔵に適した形であるグリコーゲンになります。
吸収された脂肪酸は脂肪細胞で糖と合わさって貯蔵に適した形の中性脂肪になります。
アミノ酸は筋肉で取り込まれタンパク質の材料となります。
このように食べたもののうち多くは一旦貯蔵されます。
そこで必要なってくるのがインスリンです。
血糖値を下げるホルモンと血糖値を上げるホルモン
次にそのインスリンについて説明していきます。
血糖値が低すぎる状態だと人間は生きていけません。
これを低血糖と言いますが、詳しく説明した動画を別に作っていますので低血糖について知りたい方はそちらをご覧ください。
逆に血糖値は高すぎてもいけません。
いつも高い状態を糖尿病と言います。
高血糖が長く続くと糖尿病合併症という困る状態になります。
どちらにもならないように血糖値をちょうど良い値にするような仕組みがあります。
血糖値はホルモンによって調整されています。
ホルモンってなんでしょうか。
焼肉で出てくるホルモンとは違います。
ホルモンは体の環境を一定に保つための化学物質で、たくさんの種類があります。
そしてそれぞれに作られる場所と役割と働く場所とが決まっています。
ホルモンを作る工場を内分泌腺と言います。
作られるホルモンごとに体の色々なところにその工場があります。
作られたホルモンは血液の流れに乗って全身に届けられます。
血糖値は血糖値を下げるホルモンと上げるホルモンのバランスで絶妙にコントロールされています。
天秤をイメージしてください。
血糖値を下げるホルモン
血糖値を上げるホルモン
これらのホルモンが両端に乗っていて、量が多くて重い方、ホルモンの働きが強い方に血糖値が変化します。
これらが増えたり減ったりすることで血糖値をいつも同じくらいに保ってくれています。
血糖値を下げるホルモンは1種類だけです。
それがインスリンです。
インスリンの工場、内分泌腺は膵臓です。
インスリンが働く場所、標的臓器は、主に肝臓、筋肉、脂肪の細胞です。
逆に、血糖値を上げるホルモンはたくさんありますが、主に4種類です。
まず膵臓から出るグルカゴンです。
グルカゴンの工場、内分泌腺は膵臓です。
グルカゴンの働く場所は主に肝臓、筋肉、脂肪です。
グルカゴンはインスリンと分泌される場所も働く場所も似ていますが、インスリンとは反対に血糖値を上げるという働きをします。
このような特徴があるのでグルカゴンは、インスリンと拮抗するホルモンのうち最も重要なホルモンです。
血糖値を上げるホルモンは他にもあります。
交感神経や副腎髄質から出るカテコラミン。
副腎皮質から出るコルチゾール
脳の下垂体から出る成長ホルモン
などです。
一旦ここまでをまとめます。
血糖値を下げるただ一つのホルモンはインスリンです。
血糖値を上げるホルモンは主に4種類ありますが、インスリンと拮抗して働くホルモンの代表はグルカゴンです。
どちらも膵臓で作られ、働く場所は肝臓、筋肉、脂肪です。
血糖値を下げるホルモンと上げるホルモンの絶妙なバランスで血糖値が一定に保たれています。
血糖値がちょうどいいのを維持するための基礎分泌
ここからは血糖値の動きを中心に説明していきます。
まず、血糖値がちょうどいい状態をどうやって維持しているかを説明します。
血糖値は70mg/dLから110mg/dLの間に調整されていて、どちらかの方向にずれそうになるとインスリンを作るのを増やしたり減らしたりして調整します。
また、血糖値を上げるホルモンを作る量を調整することでも血糖値を調整しています。
血糖値を上げるホルモン、例えばグルカゴンの分泌が全くなくなることはないので、それに対抗するためインスリンは低血糖にならない限り24時間ずっと作られ全身に送られ続けています。
このような血糖値をちょうど良い値に維持するために作られ続けているインスリンを基礎インスリンといいます。
このインスリン分泌の土台と呼べる基礎の分泌、基礎インスリンが血糖値の安定に必要です。
これがないと、血糖値は上がり続けてしまいます。
血糖値を下げる追加分泌
次に、血糖値が高くなってしまった時に体の中で起こることについて説明します。
血糖値が高い時、例えば食後や過度なストレスがかかった時などがそうです。
この時に、膵臓では、血糖値が高いということを感知して、インスリンをたくさん作ります。
インスリンが増えたら、インスリンと血糖値を上げるホルモンのバランスが変わります。
インスリンの働きが全身で強くなります。
インスリンは、肝臓の細胞から血の中にブドウ糖を送り出すのを減らします。
また、筋肉の細胞の中に、ブドウ糖を取り込み糖を蓄えるのに適した形であるグリコーゲンを合成します。
脂肪の細胞でもブドウ糖を取り込み中性脂肪の合成の材料にします。
インスリンの働きで血液の中から肝臓、筋肉、脂肪に糖が入っていくので血液の中の糖が減ります。
こうやって血糖値が下がり、ちょうど良い値まできたら膵臓がそれを感知して、インスリンを作るのを元の量に戻します。
血糖値が上がった際に下げるために追加で分泌されるインスリンを追加インスリンといいます。
追加インスリンが一番活躍するのはなんと言っても食事の後です。
全身の血糖値が高くなりすぎる前に糖が入ってくることや血糖値が上がることをいち早く察知して瞬時に大量のインスリンを送り出します。
こうやって追加インスリンが働くことで血糖値を下げています。
先ほど説明した基礎インスリンとこの追加インスリンがそれぞれの場面でそれぞれの役割をこなすことで血糖値は大きく上昇することがないようにできています。
血糖値を上げる仕組み
逆に血糖値が低すぎる状態の時にはどうでしょうか。
膵臓でインスリンを作るのが止まります。
血糖値が低いと脳が働かなくなるので血糖値を上げる反応は非常に早く起こります。
逆に、血糖値を上げるホルモンがそれぞれの工場で作られます。
特に交感神経や副腎髄質というところで作られるアドレナリンは闘争と逃走のホルモンとも呼ばれていて非常に早く血糖値を上げる仕組みを持っています。
インスリン拮抗ホルモンの代表であるグルカゴンも低血糖の際には作られる量が増えます。
こうなると全身でインスリンの働きが弱くなり、糖を細胞内に取り込まなくなります。
逆に肝臓の細胞の中にあるグリコーゲンという貯蔵された糖を溶かして、血液の中にブドウ糖を送り出します。
こうやって血糖値を上げています。
まとめ
消化され吸収されたブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸などの栄養は、インスリンの働きによって筋肉、脂肪、肝臓などにグリコーゲン、中性脂肪、タンパク質として蓄えられます。血糖値を一定にするために、血糖値を下げるインスリンというホルモンと、血糖値を上げるグルカゴンやアドレナリンといったインスリン拮抗ホルモンがあり、これらが天秤のようにバランスをとっています。
血糖値を維持するために基礎インスリンが持続的に分泌されていて、血糖値を上げるホルモンとつり合うようになっています。
食事により栄養が入ってきたのを膵臓が察知したり血糖値が上がってしまったりすると追加インスリンが分泌され、ブドウ糖が細胞の中に取り込まれて血糖値が下がります。
血糖値が低いとインスリンを作るのをやめて、逆に血糖値を上げるホルモンがたくさん分泌されます。その結果、細胞の中に蓄えられていた糖が溶かされてブドウ糖になり血液の中に出ていき血糖値を上げます。
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参考文献・参考書籍
【参考書籍】
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