【糖尿病専門医が解説】HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 理解して血糖値の平均値を知って糖尿病で困ることを減らす

糖尿病

 検査の前の日から気をつけても、普段の血糖値、わかっちゃいます。

 HbA1cは使い方を知ることでたくさんの場面で大活躍する、とても頼もしい味方です。
この記事で血糖コントロールがわかる検査、HbA1cがよく分かります。

 HbA1cは糖尿病の予防にも、診断にも、途中経過を見るためにも、目標を立てるのにも、とても役立ちます。

 例えば、

 糖尿病の合併症を予防するには血糖コントロールはどうしたら良いのか?

 という疑問にもHbA1cについて理解することでバシッと答えることができます。

 HbA1cをうまく利用すると糖尿病で困ることを減らすことができます。

 では始めていきましょう。

 健診でHbA1cが高いと言われた方

 糖尿病の検査でHbA1cと聞くけど詳しく知らない方

とっては特に知っておくと役立つお話です。

血液の中の、赤血球の中の、ヘモグロビンの中の、HbAの中の、HbA1の中にあるHbA1c

まず、そもそもHbA1cってなあにというところを説明します。

           血液の中には赤血球という酸素を運ぶ役割の細胞があります。

           その赤い色素の部分、難しい言葉で血色素と呼ばれるのがヘモグロビンです。

           ここまででヘモグロビンエーワンシーのうち、最初のヘモグロビンの部分だけ説明しました。

           では、その後のA1c はなんでしょうか。

           ヘモグロビンにはAとFがあります。

           Aはadultで大人、Fはfetalで胎児

のアルファベットの頭文字から来ています。

           赤ちゃんのヘモグロビンは胎児型のヘモグロビンFです。このヘモグロビンFは大人でもほんの少し、0.5%だけ残っています。

           大人のヘモグロビンのうち残りの99.5%は成人型のヘモグロビンAです。

           ヘモグロビンAはさらに分類できます。

           約90%はヘモグロビンA0、

           約7%はヘモグロビンA1、

           約2%はヘモグロビンA2です。

           このうち、HbA1というのは、ヘモグロビンに糖がくっついているものです。

           糖がくっついているヘモグロビンであるHbA1はもう1段階細かく分類できて、HbA1a1,HbA1a,HbA1b,HbA1cなどがあります。

           このHbA1の中で、割合も多くて、安定していて、糖がくっついたヘモグロビンの代表とも呼べるのがHbA1cです。

血液の中の、赤血球の中の、赤くて酸素を運ぶヘモグロビンの中の、成人型のヘモグロビンAの中の、糖がくっついたHbA1の中で最も多く安定しているのがHbA1cです。

           全てのヘモグロビンの中で、このHbA1cが占めている割合を検査で調べます。

           糖尿病ではない方だと、この値が大体4.6%〜6.2%くらいになります。

           赤血球は作られてから壊されるまで120日くらいかかります。

           赤血球が存在する血液の中には、一緒に糖も含まれていてヘモグロビンと糖が同じ血液の中で一緒に過ごします。

         人同士も一緒にいると仲良くなることがありますよね。           

 ヘモグロビンも糖と仲良くなって、くっつきます。

血液の中の糖が多ければ多いほど、ヘモグロビンとの出会いも増えてたくさんくっつきます。

           血の中の糖が少ないと、ヘモグロビンに糖がくっつくのが減ります。

           逆に、血の中の糖が多いと、糖がくっつきやすいので、糖がくっついたヘモグロビンであるHbA1cが増えます。

           HbA1cは比較的安定していると言っても、糖とHbA1cがくっついてから30日くらいでまた離れてしまいますので、赤血球の寿命である120日ももたないです。

           結果、HbA1cは過去1ヶ月から2ヶ月程度の血糖値をよく反映することになります。

医療機関で1回血液検査をすればそれだけで過去1ヶ月から2ヶ月程度の血糖値がどれくらいだったのかがよく分かります。

           この性質を理解して使えばとても便利な検査です。

呼び名がたくさんあって大混乱

HbA1cは書き方や読み方や別名がたくさんあり、分かりにくいかもしれませんので説明しておきます。

           医療従事者でもいろんな呼び方をします。

           私は、HbA1cと書いて、ヘモグロビンエーワンシーと読んでいます。

           とても細かいですが、HとAは大文字、bとcは小文字です。

           他にも、

           同じくHbA1cと書いて、エイチビーエーワンシーとそのまま読むこともあります。

           ヘモグロビンの部分を省略してA1cとだけいうこともあります。

           さらに、糖がくっついたヘモグロビンという意味を考えて、

           糖化ヘモグロビン

           それを英語にしてグリコヘモグロビン

           などと呼ぶことがあります。

           とても多くて混乱してしまいますが同じものを指しています。

           ヘモグロビンとだけ呼ぶこともなくはないですが、それは通常は赤血球の成分のことを指してしまい、別の意味になってしまうので医療現場ではあまり使いません。

           たくさん呼び方があって大変ですが、検査結果の用紙や糖尿病のお話を聞くときに、HbA1cの違う呼び方が出てきても慌てないでください。

HbA1cが◯%なら糖尿病の予防を始めよう

2型糖尿病は予防する方法があります。

           HbA1cの知識があれば予防のための行動を始めやすくなります。

           HbA1cが5.7%から6.4%の方は、糖尿病の発症リスクが高いことがわかっています。

           朝一番の血糖値が100mg/dL以上で、HbA1cが5.7%以上なら、そうでない方に比べて約30倍糖尿病になりやすいです。

           血糖値が高いと糖尿病になりやすいというのは当たり前といえばそうかもしれません。

           しかし、糖尿病は前もって自分でわかる症状がほぼないので、HbA1cを測ってはじめて糖尿病に近づいているかが分かります。

           HbA1cが5.7%以上で発症が予測される場合は、知識をつけて生活習慣を変えることで発症を予防できることがあります。

           肥満の是正、食事や飲み物の見直し、運動、禁煙、睡眠、働き方の見直しなどたくさんの予防法を組み合わせて行うことをお勧めします。

           予防について、詳しくは別の記事にとても分かりやすくまとめていますのでそちらもぜひご覧ください。

HbA1cは糖尿病の診断で大活躍

HbA1cは糖尿病かどうかを診断する際にとても役立ちます。

           診断について説明していきます。

           糖尿病かどうかの診断は、高血糖があることと、高血糖が長く続いていることの両方が揃う必要があります。           

 まず、高血糖があるかどうかですが、お腹が空いた状態の血糖値が126mg/dL以上、そうでない時の血糖値が200mg/dL以上、75グラムの糖を含む飲み物を飲んだ2時間後の血糖値が200mg/dL以上のうちどれか一つ以上があてはまることが基準になります。

 

この基準を満たしてもその時の血糖値が高いことは分かりますが、高血糖が長く続いているのは証明できません。

           血糖値だけで証明しようとすると、別の日に出直してまた血糖値を検査しなければならないのでとても不便です。

           ですので、長く血糖値が高い状態ということの証明には今回説明しているHbA1cがまず使われます。

           HbA1cが6.5%以上だと、過去1〜2ヶ月くらいは糖尿病のレベルで血糖値が高かったことが分かります。

 その時の血糖値が高いこととHbA1c:6.5%以上であることを組み合わせることで1回の検査で糖尿病と診断できます。

           他にも、口が乾く、たくさん飲む、尿がたくさん出る、体重減少などの糖尿病の典型的な症状、または、糖尿病網膜症が見つかる場合も長く血糖値が高いことの証明になり診断できますが、症状のみでは判断が難しかったり、眼科を受診したりしなければならないため、HbA1cを測定して診断することが多いです。

           健診で血糖値とHbA1cをセットで測定してもらう場合は、その健診のみで糖尿病の診断がつくこともあります。

           気になる方は採血のついでにHbA1cの測定もオプションでつけてみてください。

           HbA1cのおかげで糖尿病の診断がとても簡単にできるようになっています。

           早めに診断をつけることができれば糖尿病の合併症が起こる前に治療を開始できます。

           ぜひHbA1cが糖尿病の早期の診断に役立つことを知っておいてください。

糖尿病の治療の目標はHbA1cで立てよう

HbA1cを用いて診断された後の治療でもHbA1cがまた活躍します。

           HbA1cは糖尿病の治療の目標としてよく使います。

           糖尿病治療自体の目標は健康な人と変わらない人生です。

           このためには糖尿病の合併症の発症や進展を阻止する必要があります。

           合併症の予防には、血糖、血圧、脂質代謝の良好なコントロールと適正な体重の維持と禁煙が有効です。

           この合併症を予防するために最も重要な血糖管理の指標となるのがHbA1cです。

           治療目標は年齢や低血糖の危険性に応じて個別に設定しますが、多くの方で糖尿病合併症を予防するときに目標となる数値はHbA1c:7.0%未満です。

この7.0%未満という値は過去の研究で合併症が進みにくいとわかっている数値です。

           逆にHbA1cが7%以上になると糖尿病合併症が進みやすくなります。

           ですので、HbA1cがこの数値を超えていると、それまでにしていた治療を見直す必要がある、ということが分かります。

           治療の見直しについては次のチャプターで詳しく説明していきます。

           また、糖尿病がある方で近い将来妊娠をしたいと考えている方も、まずHbA1cを6.5%未満にした方が赤ちゃんにとって良いことがわかっています。

           糖尿病の目標値としてHbA1cでなく血糖値を設定しても悪くないのですが、少し不便です。

           ちなみにHbA1c7.0%だと、大体朝ごはん前の血糖値が130mg/dL、食後2時間の血糖値が180mg/dLくらいになります。

           不便な理由ですが、血糖値は直近の食事の影響を大きく受けます。

           例えば、普段の血糖値はちょうど良いのに、前の日だけたまたまたくさん食べてしまったらどうでしょうか。

           次の日の朝の血糖値が上がってしまいます。

           それだけを見ると、まるで治療が弱すぎて血糖値がいつも高いのではないかと勘違いされてします。

           結果、薬が必要以上に増えて、低血糖になってしまうことがあります。

           逆のパターンもあります。

           普段の血糖値は高いのに、検査の時だけ良い血糖値にするために検査の前日だけ運動したり食事を抜いたりするとどうなるでしょうか。

            検査の日の血糖値は低く見えてしまいます。

           こうなると、実際には合併症を予防するために治療を強めないといけないことに気づかなくなってしまいます。

           血糖値だけでなく、HbA1cを測ることでこういう間違いを減らすことができて、適切な治療が受けられます。           

 こんな理由でHbA1cは糖尿病の血糖管理の目標の値としてとても使いやすく世界中で広く使われています。

HbA1cを使って治療を見直し

糖尿病の治療を考えるときにまず知っておくべき大事なことをお伝えします。

               HbA1cが高いということは過去1から2ヶ月の血糖値が高いことを反映していて、これは合併症が進んでしまいやすい状況だ、ということです。

               HbA1cが高い状況を放置しておいたら合併症がどんどん進んでしまい困ることが増えてしまいます。

               合併症を起こさないようにするには、HbA1cが7.0%未満の状態をずっと維持すること、もし7.0%を超えたら早めに治療を見直すことが大切です。

               治療の強さは強ければ強いほど良いわけではなく、血糖値が下がりすぎると低血糖になりむしろ悪い結果になります。

               ですので、低血糖を起こさない範囲でHbA1cは7.0%を切るように調整します。

               糖尿病の治療薬で低血糖を比較的起こしやすいのは、インスリン、スルホニルウレア薬、グリニド薬です。

               これらの薬に共通するのは血糖値が低くても、そこからさらに血糖値を下げる力があるということです。

               他の薬剤でも低血糖を起こす可能性は0ではありません。

               ですので、血糖値が低くなりすぎないように治療の強さを設定する必要があります。

               低血糖だと症状が出ます。

               ですので、低血糖の症状がどんなものか知っておいて、低血糖がある場合はHbA1cに関わらず治療の調整をしていく必要があります。

               低血糖については別の記事に分かりやすくまとめていますのでそちらもご覧ください。

               低血糖は血糖値で言うと70mg/dL未満のことを言いますので、実際に血糖値を測定して低血糖が起こっていないかを知ることもできますが、飲み薬だけで治療している場合には健康保険が使えず自費で血糖測定をしなければなりません。

               低血糖があったら低血糖の原因を探して、治療を調整します。

               その上でHbA1cが7.0%を切れるよう治療を設定します。

               このようにHbA1cという分かりやすい目標を医師と一緒に決めておくことで、治療を強めないといけないタイミングも分かりやすくなると思います。

               合併症を発症してしまうと元に戻らないことが多いです。

               合併症を起こさないためにHbA1c7.0%未満を維持することを優先して、早め早めに治療を見直してみてください。

万能ではない!HbA1cの弱点を知ることでより確実に血糖値を見極める

           HbA1cはとても役立ちますが、万能ではありません。

           まず、1〜2ヶ月の血糖値の平均値しかわからないので、その途中でどのように上がったり下がったりしているのかが分かりません。

           例えばHbA1cは同じ値でも、血糖値がずっと100から200mg/dLの間くらいだったのか、血糖値が50mg/dLから250mg/dLを行ったり来たりしていたのかは分かりません。

           あくまで平均的な血糖値がわかるだけです。

           また、赤血球に何か異常があったり大量に出血したりした場合などは、ヘモグロビンに糖がくっつく割合が通常と異なってくるのでHbA1cが血糖値をきちんと反映しなくなってしまいます。

           赤血球に異常がある場合は分かりにくくなるので他の方法を使わないといけなくなります。

           また、HbA1cの特性として、過去1から2ヶ月の血糖値を反映するので、最近3日間だけの血糖値を知りたいと思っても残念ながら分かりません。

           ですので、急激に血糖値が上がった、逆に急激に血糖値が下がったというのを見つけたり調べたりするのには適していません。

           これらの弱点を知った上で、HbA1cを有効に利用しやすい場面で活用するようにします。

まとめ

HbA1cは血液の中のヘモグロビンの中の成人型ヘモグロビンの中の糖化したヘモグロビンの中で最も安定した代表的なもので、過去1〜2ヶ月の血糖値を反映します。

HbA1cという呼び方以外にも、エイチビーエーワンシー、A1c、グリコヘモグロビンなど別名があります。

HbA1cが5.7%から6.4%だと予防についての知識をつけて2型糖尿病の予防をおこなってください。

血糖値が高いことと併せて、HbA1cが6.5%以上というのが糖尿病の診断に使われます。

糖尿病の合併症を起こさないためにHbA1c7.0%未満を目標にします。

低血糖を起こさずにできる範囲でHbA1c:7.0%未満になるように治療を調整します。

平均的な値しかわからない点、赤血球の異常に弱い点、急激な血糖値の変動を反映しない点に注意が必要です。

HbA1cを理解して、味方にして、使いこなしていきましょう。

以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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参考文献・参考書籍

【参考文献】

The Diabetes Control and Complications Trial Research Group.The Effect of Intensive Treatment of Diabetes on the Development and Progression of Long-Term Complications in Insulin-Dependent Diabetes Mellitus :N Engl J Med 1993; 329:977-986

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejm199309303291401

Yasuo Ohkubo,Hideki Kishikawa,Eiichi Araki,Takao Miyata,Satoshi Isami.Sadatoshi Motoyoshi,Yujiro Kojima,Naohiko Furuyoshi,Motoaki Shichiri.Intensive insulin therapy prevents the progression of diabetic microvascular complications in Japanese patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus: a randomized prospective 6-year study:Diabetes Research and Clinical Practice 28(1995), 103-117

UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes (UKPDS 33):The Lancet,352(1998),837-853

【参考書籍】

糖尿病治療の手びき2020(改訂第58版)

糖尿病診療ガイドライン2019

病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌

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