【糖尿病専門医が解説】糖尿病でどんな症状が出るかを知って困る前に治療を始める

急性代謝失調

糖尿病の症状を知ることで困ることを減らせます

 この記事では糖尿病の症状についてお話しいたします。

  健診や検査を最近受けていない方
  血糖値が高いと言われているけれどまだ治療を始めていない方

 に特に知っておいていただきたいお話しです。

 糖尿病では軽症の場合はほとんど症状がありません。

 ですので、糖尿病が症状が出てから見つかることは少ないです。

 しかし、中くらい以上の糖尿病では、症状が出ることがあります。

 ここで気付いて治療を始めないと、血糖値がとても高くなり、体の中の水分がどんどん失われて倒れてしまうことがあります。

 糖尿病と言われたことが無い方も、糖尿病と言われた方も中くらい以上になると出てくる症状を知っておくことで、重症の糖尿病になる前に治療が始められます。

 ですので、糖尿病の症状を知っておいていただきたいのです。

糖尿病の症状

 最初にとても大事なお話をします。

 糖尿病になってもほとんど症状はありません。

 だからと言って症状について知らなくていいわけではありません。

 症状が出てくると言うことはすでに危険な状態に近づいているんだと気付くこと、症状が出る前に糖尿病を見つけることが大切なのです。

 症状は危険を知らせてくれるものですので知っておいて、適切に対応する必要があります。

 糖尿病の症状は大きく分けて二つあります。

 1つは血糖値がその時に高いために起こる症状と、もう一つは長期間高血糖が続いて糖尿病による合併症が起こってしまったために起こる症状です。

 どちらも最初はほとんど症状はありませんが、血糖値がとても高い状態の時にはその時血糖値が高いために起こる症状が、血糖値が高い状態が長期間続いた場合には合併症による症状が出ることがあります。

高血糖の症状

 まず、その時血糖が高くなることによって出てくる症状についてお話しします。

 人間には、血糖値をちょうどよくするための自動調整システムがあります。

 それが何らかの理由でうまく働かない場合に血糖値が上がって糖尿病になります。

 血の中の糖が多いと、血糖値を下げるインスリンというホルモンを増やしたり、血糖値を上げるホルモンを減らしたり、と自動的に調整してくれます。

 しかし、長期間の生活習慣の影響やインスリンを適切に作れなくなることで血糖値を調整するシステムがこわれてしまって、血糖値が高くなってしまうのが糖尿病です

 糖尿病で、血糖値が中くらい以上に高いと、その糖をおしっこの中に捨ててくれるシステムが働きます。

 人によって違いますが血糖値で言うと180mg/dL以上でこの尿の中に糖を捨てるシステムが働くことが多いです。

 血糖値がそれより高ければ高いほどたくさんの糖が尿の中に出ます。

 糖を捨てると言っても、おしっこをしたら粉が出てくるわけではありません。

 尿の中に糖を捨てる時には、糖と一緒に体にとって大切な水も捨てなければなりません。

 ですので、おしっこの量が多くなります。

 1回のおしっこの量が多くなり、トイレに行く回数も増えます。

 これを多尿と言います。

 大切な水を捨ててしまうので体の中に水が足りない状態、難しい言葉で脱水という状態になります。

 血糖値が高ければ高いほど水もたくさん捨てられてしまい、強い脱水状態になります。

 脱水の状態になると体が、喉が乾いたよ、水分を取らないといけないよ、と知らせてくれるので、喉が乾く、と感じます。

 水分を取ると、短時間だけですが喉の乾きが無くなります。

 水を頻繁に、たくさん飲まないと我慢できないくらいになります。

 また、通常は尿の中に捨てられないはずの糖を捨てるわけですので、捨てた分だけ体はエネルギーを失います。

 糖は1gあたり約4kcalですので、例えば尿の中に100gの糖が捨てられると約400kcal分のエネルギーが捨てられることになります。

 そのため、尿に糖が出始めると体重が減っていきます。

 また、体がだるい疲れやすいと言う症状が強く出る方もおられます。

 ここまでみてきましたように高血糖になると、糖を含む尿がたくさん出る、喉が乾く、たくさん水を飲みたくなる、体重が減るなどの症状が出ます。

 他に、
  傷が治りにくくなる
  感染症にかかりやすくなる
といった症状が出てくることもあります。

 これらはその時の血糖値が中くらい以上に高くなると出る症状です。

合併症の症状

 高血糖が長期間続くと、それとは別に合併症による症状が出てくることがあります。

 感覚神経がいたんでくると足の感覚が鈍くなる

 腎臓がいたんでくると足がむくんでくる

 足の血管が硬くなると足が冷たくなる

 心臓の血管が狭くなったり詰まったりすると胸が痛くなる

 と言った症状が出てくることがあります。

 これらは高血糖が長期間続いたため合併症が起こってしまい出てくる症状です。

症状が出たときの注意点

 ここまでに挙げた症状はどれも糖尿病が中くらい以上悪い状態か、長い期間高血糖が続いた時に出てくる症状です。

 軽いものから中くらいまでの糖尿病の方や、糖尿病になってからの期間がまだ短い場合は症状が出ることはほとんどありません。

 症状が出ないので痛かったり苦しかったりはしないのですが、糖尿病と気付かないことがあります。

 気付かないせいで糖尿病の治療を開始できない方もおられて、糖尿病がどんどん悪化することがあります。

 特に、喉が乾いた時に、糖がたくさん含まれている清涼飲料水、炭酸飲料などを大量に飲んでしまって急激に血糖値が上がってしまうことがあります。

 これは、ペットボトル症候群清涼飲料水症候群などの名前がつくくらいで、とても血糖値が高くなり、意識を失って病院に運ばれることもある怖い状態です。

 糖尿病の症状で喉が渇いた時に、何を飲むかは大切です。

 水分を補うのは水やお茶にしてください。

 やけに喉が渇いても糖が入った飲み物を大量に飲むことは避けるようにしてください。

検査が大切

 糖尿病は早めに見つけて、困ることを起こさないのが大切です。

 症状が出るまで待つのではなく、症状が出る前に見つけて、治療を開始できれば困ることを減らすことができます。

 多くの方は、自治体や職場の健康診断や別の理由で訪れた医療機関での検査で糖尿病を見つけてもらって、診断してもらっています。

 1年以上健診を受けていない、検査も受けていないという方は、糖尿病がひどくなって症状が出るより前に検査を受けることをお勧めいたします。

 糖尿病の治療は、食事、運動、お薬とあります。

 お薬はもちろんですが、食事や運動も自分一人でやるより、医療機関で専門家と一緒にやる方が、より安全で効果も高い治療ができ、治療を途中やめにしてしまう可能性も下がります。

 糖尿病と診断されないことが大切なのではなく、知らない間に糖尿病になっているのを放ってくことで糖尿病によって困ることが増えないようにするのが大切です。

 糖尿病になってしまっているかどうか診断をつけてもらい、早めに適切な治療を開始することができるよう、定期的に健診か検査を受けるようにしてみてください。

まとめ

 糖尿病の症状はほとんどありません。しかし、中くらい以上まで血糖値が高くなると、おしっこが増える喉が乾くたくさん飲む体重が減る疲れやすいという高血糖による症状が出てきます。

 また、高血糖が長期間続くと、足の感覚が鈍い、足がむくむなどの糖尿病の合併症の症状が出てくることがあります。

 喉が渇いたという症状が出た時に、糖がたくさん入った清涼飲料水を大量に飲んでしまうと、急激に血糖値が上がってしまい意識を失って倒れることがあります。

 健診や検査を受けていない方で糖尿病の症状が出てきてしまったら、糖の入っていない水かお茶で水分を補いながら、早めに医療機関で相談してください。

 そうなる前、症状が出る前に、糖尿病を発見することが大切です。

 定期的に健診検査を受けるようにして、症状が出る前に、糖尿病で困ることが起こる前に、専門家と一緒に治療を開始してください。

 そうやって糖尿病で困ることを減らしていきましょう。

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参考文献・参考書籍

【参考文献】

Diabetes Care 2020 Jan; 43(Supplement 1): S14-S31.

【参考書籍】

糖尿病診療ガイドライン2019

病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌

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