糖尿病について使える知識に絞って専門医が解説します。
短い時間で大事なところだけ知りたい方はぜひご覧ください。
絶対に伝えないといけない部分を残して他は削りに削りました。
この知識を得ることで皆様は正しい方向に向かって糖尿病の治療を始められます。
自分の命、自分の体をまもることにつながる情報です。
内容を慎重に吟味しました。
内容は、ただ知っているだけではなくて、人に説明できるレベルで理解して欲しい内容です。
糖尿病を診断されたばかりの方にとっては特に知っておくと役立つお話ですので最後までご覧ください。
全員が知っておくべき糖尿病の2つの病態と6つの原因
最初に2型糖尿病の病態についてお話しします。
病態を知っていれば、何をすればよくなるのかがわかります。
病態を理解するためにまず糖の流れとインスリンについてお話しします。
食べたものは小腸から吸収されて、まず肝臓に運ばれます。
運ばれた糖のエネルギー源として肝臓にたくわえられたり、血液の中の糖として全身に運ばれます。
運ばれた糖は全身の臓器でエネルギー源になります。
そこで重要なのがインスリンというホルモンです。
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。
インスリンがどのように血糖値を下げるかお話ししていきましょう。
糖尿病の病態は、インスリンが少ないか、インスリンが効きにくいか、その両方が合わさっているかです。
まず細胞を一つの部屋、部屋の外を血管としてイメージしてみてください。
脳や筋肉や肝臓といった臓器が働くには糖が血液の中から細胞に入らなければなりません。
部屋には扉があります。
その扉を開ける係をするロボットがインスリンです。
インスリンによって部屋の扉が開けられ、糖は中に入ることができます。
糖が中に入るということは部屋の外の血管の中の糖が少なくなります。
つまり血糖値が下がります。
これは肝臓、筋肉、脂肪など全ての臓器の細胞での話です。
このようにインスリンは細胞が糖を利用して働くのに必要です。
細胞には24時間ずっと糖が必要ですが、食べ続けるのは大変なので、余った糖をいったん蓄えておくシステムがあります。
余った糖は筋肉、脂肪、肝臓に蓄えておきます。
この糖の出入り口の扉が重たくなることがあります。
インスリンが扉を開くのにたくさん必要な状態です。
長年の食べ過ぎ、肥満、運動不足、ストレスによってこの扉を開くのにインスリンがたくさん必要な状態になってしまいます。
扉を開けようとするインスリンに抵抗する状態なので、インスリン抵抗性と言います。
聞き慣れない言葉ですが、インスリン抵抗性という言葉は今後、運動療法を考えるときや治療薬を選ぶ時に繰り返し聞くことになると思いますので、覚えておくことをお勧めします。
インスリン抵抗性が大きい状態には1日だけではなりませんが、長年このように扉が重い状態が続くと、細胞に入れなかった糖が血液の中に多すぎる高血糖状態になります。
部屋に入れなくなった糖が多くなってくるとインスリンの工場である膵臓がインスリンをより多く作るようになります。
作られたインスリンは血液の中に送りだされ全身に派遣されます。
これをインスリン分泌と呼びます。
ある程度までなら膵臓の工場が頑張ってくれます。
膵臓がインスリンをたくさん作り血液中に送り出します。
重たい扉もたくさんのインスリンがくると開き糖が部屋の中に入っていきます。
食べる量が多すぎたり、運動不足になると、蓄えが過剰になってしまい肥満という状態になります。
これは部屋の中の糖がギュウギュウに詰まった状態です。
その状態だとさらに部屋に糖が入ってきては困るので扉は重たくなりインスリン抵抗性が増すので、膵臓はさらにたくさんインスリンを作ります。
するととても重たい扉をたくさんのインスリンで開いてもっと糖を部屋の中に押し込み、さらに太ります。
これは何年も続くのですが、ある時に限界がきます。
太りすぎなどで、もう部屋に糖がいっぱいで扉も極めて重たい状態です。
膵臓の工場ももうフル稼働している状態です。
膵臓は無理してインスリンを作り続けると、その作業員が倒れてしまい、今度はだんだんそのインスリンを作る力が落ちていきます。
そうなると、インスリンが不足して細胞の扉を開くことができず糖が入っていかない状態になります。
こうやって細胞に入ることができなかった糖が血液の中にずっとある状態になります。
この高血糖状態が長く続くことを糖尿病と言います。
こうやってなる糖尿病を2型糖尿病と言いますが、糖尿病の中で最も多いタイプです。
血糖値を正常に保てなくなるのかどうかはかなり個人差があります。
インスリン分泌が不足しやすい体質やインスリン抵抗性が大きくなりやすい体質が遺伝していることがあります。
また、年齢を重ねていくことでインスリンを作る力は徐々に低下します。
年齢とともに筋肉が衰えると筋肉の部屋の数が減ったりサイズが小さくなったりして、糖を預かれなくなり、インスリン抵抗性が大きくなってしまいます。
睡眠不足などストレスがかかることでインスリン抵抗性が大きくなることもあります。
ここまでを一度まとめます。
高血糖の病態は2つありインスリン抵抗性とインスリン分泌不足です。
それらが組み合わさって高血糖になります。
その主な原因としては、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレス、遺伝、年齢の6つが挙げられます。
ここからが本題です。
この中で改善できる項目とできない項目に分けます。
改善できないのは、遺伝と年齢です。
改善できるのは、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスの4つです。
遺伝や年齢はどうしようもないので気してもしかたありません。
自分の体をまもるためには、改善できる4つの原因に注目してください。
食事療法の”0歩目”とは
まず食べ過ぎです。
自分が必要とする量に対して、食べたり飲んだりする量が多すぎる状態です。
食べ過ぎの対策は、まずは、食事の記録をしましょう。
その記録を専門家である管理栄養士さんなど医療スタッフに見てもらってください。
間食や飲み物も記録してください。
記録は写真を撮るのが一番です。
情報量も多いし、短時間でできるので続けやすいです。
2週間分くらいあればかなり正確に食事の傾向がつかめます。
管理栄養士さんにありのままを見せて、長続きして効果的な食べ過ぎの改善の方法を教えてもらってください。
ほとんどの方にとって自分一人でやるより確実で良い効果が期待できます。
食事はとにかくバランスが大切です。
栄養素で言うと、取りすぎている栄養素を知ってそれを減らすことが大切です。
また、食事療法は完璧にする必要はありません。
より良い食事内容にすることと続けやすさのバランスが大切です。
食事療法は長く続けられる方法を見つけていく作業になります。
失敗もします。
必ず失敗すると思って失敗するのを前提に始めてください。
その時こそ管理栄養士さんの力が発揮されます。
失敗の情報を共有してより続きやすい方法に切り替えるだけです。
管理栄養士さんは別の方法をたくさん知っています。
喜んで一緒に次の方法を考えてくれます。
食事療法は始める前の0歩目として写真を撮って管理栄養士さんと一緒に考えて始めてみてください。
100%できる運動療法
次に運動です。
運動はどうやって続けるかが大切です。
特に失敗しやすいのは、運動が習慣になるまでの最初の最初です。
お勧めは、慣れるまでは必ずできる運動をすることです。
例えば、スクワットを1回だけする。
腕立て伏せを1回だけする。
くらい簡単なものからやることをお勧めします。
100人中100人が100日間続けられるくらい簡単なものから始めてみてください。
100日間続けられなかった場合は、難しかったと考えて、もっと簡単な運動に変えます。
こうやって100日間続けられた人には次の段階に進むように伝えています。
運動は1週間で150分以上すると効果が高いと言われるので、この週150分以上の時間を運動にあてていくようにします。
これも段階を追って少しずつ増やしていきます。
この150分は、50分ずつ3日に分けてもいいですし30分ずつ5日に分けてもいいです。
もっと細かくしても構いません。まとまった時間を取れない方は、1分ずつ150回に分けてもいいです。
例えばエレベーターでなく階段を使うと1分くらいの運動になるのではないかと思います。
細切れになると運動を何分したかがわかりにくくなります。
記録が面倒だとやめてしまいます。
そのような方には運動を自動的に記録してくれる腕時計型の活動計が役立つかもしれません。
私が実際に使っているものはこれです。
デザインや機能などご自身にあったものが見つかればそれを検討してみてください。
運動はとにかく習慣づけることが大切です。
簡単なことから始めてみてください。
みんなが知りたい肥満改善の王道とは
次に肥満についてです。
肥満の改善に一番いい方法、王道は記録することです。
まず体重計に毎日載りましょう。
体重計は、自動的に測定結果がスマートフォンに送信されるタイプだと記録の手間が省けます。
こういった面倒なことを省くことが継続のコツです。体重計もすぐに乗れる位置に出しっぱなしにしておいてください。
また1ヶ月に1回、自分の体の写真を撮り続けてください。
肥満があると最初は撮るのも見るのも嫌だと思いますが、比較することで成果がとても分かりやすくなりますので見なくてもいいので写真を残しておいてください。
運動しながら体重を減らせたらどんどん見た目が良くなっていきます。
記録は誰かに見せながらの方がより効果があります。可能なら家族、友人、医療スタッフなど誰でもいいので見せながらやってみてください。
ストレスを制するものは血糖値を制する
最後にストレスです。
ストレスは血糖値に大きく関わっており、ストレスを制すると血糖値が安定します。
ストレスは心と体、両方あります。
その両方に大いに関わるのは睡眠です。
睡眠を優先してください。
睡眠がきちんと取れているかどうかは、昼間の眠気があるかどうかで判断してください。
昼間に眠くないなら大丈夫です。
昼間に眠いなら改善点を探してください。
音や暗さや温度など環境づくりができているか。
日中に運動しているか。
眠いからといって朝起きる時間をどんどん遅くしていないか。
など見直してみてください。
ご自身で改善点がわからない場合は、厚生労働省が作ってくれている睡眠12箇条をみてみると良いです。
対策まとめ
以上、高血糖の原因である、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスについてその対策をお話ししました。
原因は一つでないことも多いです。
その場合は、特に大きな原因の部分から改善点を見つけてみてください。
まとめ
この記事全体のまとめです。
2型糖尿病の病態はインスリン抵抗性とインスリン分泌不足でした。
その原因のうち自分で変えられるのは食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスです。
食べ過ぎは、食事の写真を撮って管理栄養士さんと一緒にバランスを考えることから始めてください。
運動不足は、簡単な運動から始めて習慣を作ってください。それができたら1週間に合計150分以上を目安に徐々に時間を伸ばしていってください。
肥満の改善には、毎日体重計に載り、月に1回写真をとって記録してください。
ストレスに関してまず見直していただきたいのは睡眠です。昼間に眠気があったら睡眠不足です。睡眠12箇条を参考にして改善点を見つけてみてください。
一番大きな原因の対策から取り組むと効果が高いです。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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